結婚は人生の大きな転機であり、お互いの未来を共にする重要な契約です。
そんな中、最近では結婚前に「婚前契約書」を取り交わすカップルが増えています。
婚前契約書は、結婚生活において起こりうる様々な問題に対して、あらかじめ合意を形成しておくためのものです。
この記事では、婚前契約書に必ず盛り込むべき6つの重要な項目と、婚前契約書を取り交わすことのメリットについて解説していきます。
これから結婚を考えている方にとって、より良い結婚生活を送るための参考になるはずです。
婚前契約書って何?
婚前契約書とは別名「プレナップ」とも呼ばれ、元々アメリカやヨーロッパの慣習でした。
また、婚前契約書を取り交わせば、勢いで結婚してしまうことも防げるでしょう。客観的に自分と相手を見つめなおすきっかけにもなります。離婚原因の1位は「性格の不一致」ですが、婚前契約書を取り交わす段階で性格の不一致に気づけるかもしれません。
2人で単に「覚書」として作成することもできますが、この場合は「努力義務」のようなもの。行政書士や弁護士の下で作成したものは法的拘束力を持ちます。万が一、夫婦間のトラブルや離婚になったときも、重要な証拠になるのです。
契約は、法に反しない限りにおいて有効です。
- 夫婦での取り交わし
- 弁護士、行政書士等の作成
- 公正証書として届け出
- 法務局に登記
1⇒4の順に拘束力が大きくなります。
注意点は契約の取り消し可能な点
1点注意していただきたいことがあります。
- 民法の754条:「夫婦間の契約の取消権」
「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない」
これは何を意味するかといいますと、結婚後は同じような契約をしても「夫婦」なのでどちらかが「やめた」といえば契約をチャラにできるのです。夫婦という人生最大の契約をしているので、その後の契約は付随的なものと考えられます。
しかし、婚前契約は「婚前」=他人の状態で契約するので、通常の契約行為と同じように法律行為として第3者に対抗できる(訴えることができる)効果的なものになります。
それだけに安易な内容で契約してしまうと、男女ともに結婚後何かあった場合に困ることになります。以上を踏まえて、婚前契約書に入れておきたい5つの条項についてお話いたします。
婚前契約書に必ず入れておきたい5つ条項
1.結婚後の2人の関係性に関するもの
夫婦になるとこれまでと違い、共同で生活を営んでいかなければなりません。そのためお互いがどのように夫婦として生きていくのかまず規定することが大切です。
「あるべき夫婦像」というものはありません。だから、2人でよく話し合って具体的にどうありたいのか考えていきましょう。そのうえで、以下のようなことを入れると良いです。
家庭内暴力に関するもの
DVは夫→妻だけではなくその逆もあります。民事不介入ですので暴力に耐えて心身ぼろぼろになることは防がないといけません。
浮気に関するもの
浮気は大きな離婚原因になります。
その他
例えば、休日は余暇を思いっきり楽しむ、のような内容でも構いませんし、「週1回必ずセックスする」みたいな内容でもOKです。セックスと夫婦生活は切り離せませんのでこういうのもアリです。
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2.財産管理について
次に財産の問題です。
お金の問題は切り離せません。具体的には共働きの場合、どのくらいを家計に入れて、残りは自分で使う分にするのか、誰が家計の管理を行うのか、土地や車、住宅を購入した時は所有名義、割合をどうするのかなどを定めておきます。
夫婦それぞれ○○%を家計に入れる
どちらでも構いません。これがあいまいな夫婦はトラブルになりがちです。
家族であってもお金は他人という原則があります。お金を使い込んでしまうようなケースを防ぐ意味でも、この項目は意味があります。もちろん、拘束力がありますので注意してください。
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3.どちらかが亡くなった時の条項
突然どちらかが事故や病気で亡くなる可能性もあります。
年を取ってからなら「遺言」をする人もいますが、若いうちに遺言を残す人は少ないでしょう。
したがって、婚前契約書で不慮の事故の場合を定めておくのも重要です。お互いの親族で骨肉の争いをしてしまうことだけは何としても避けなければなりません。財産分与をどうするのか、しっかりと契約書に残しておきましょう。
4.家事・育児に関すること
家事・育児は女性だけがするものではありません。夫婦としてこれらを時には協力し、時には分担して行っていくことが必要になります。これは夫婦どちらかの負担軽減という視点だけではなく、お互いの仕事への理解や尊重にもつながります。
また、妻が妊娠中、夫がどのように協力しサポートしていくのかを定めるのも大切です。安心して妊娠→出産→育児を行うことができるように、お互いが納得する決まりを作っておきましょう。
5.親族・友人との付き合い方
結婚後は友人関係もそれまでとは異なったものになりますし、お互いの親戚づきあいも避けては通れなくなります。友人宅に入り浸ることもできなくなりますし、どちらかの親族(実家など)に行きっぱなしでも問題があります。
適切な距離感をどう作っていくのか、あらかじめ規定を作っておくと良いでしょう。たとえば、
- 自分の両親以上に相手の両親を大切にします
- 自分の両親の意見よりも配偶者の意見を尊重します
と定めておくことでうまくいく可能性があります。
夫が自分よりも母親の意見ばかり聞くマザコンで耐えられない!
こんな事態をを防止できます。
代表的で大切なものはこれらになりますが、他にも重要な条項はたくさんありますので研究してみてください。
婚前契約書を取り交わすメリット3選
婚前契約書は、夫婦が結婚する前に合意する重要なドキュメントです。
日本ではまだ一般的ではありませんが、婚前契約書を作成することには以下のようなメリットがあります。
①価値観の共有と理解促進が図れる
婚前契約書を作成する過程で、お互いの価値観や考え方を共有する機会となり、相互理解を深めることができます。
また、この過程で異なる考え方を把握し、将来起こり得るトラブルの原因を予め把握し対策を立てることが可能となります。
②合意内容を明確化できる
夫婦間での口頭の約束はよくありますが、契約書にすることで、双方が夫婦生活を円滑に進めるために守るべきルールとして認識することができます。
口約束の場合、後に「言った言わない」のトラブルが発生しやすいですが、書面にすることで合意内容を証拠として残せます。
③結婚後のトラブルに対処しやすい
結婚生活では、様々な価値観の違いからトラブルが発生することがあります。
婚前契約書に生活上のルールを定めておくことで、トラブル発生時には既に合意された内容を基に迅速に解決することが可能です。
これにより、夫婦間のコミュニケーションの質が向上し、円滑な夫婦関係を築く助けになります。
婚前契約書を作成する上での注意点
さまざまなメリットがある婚前契約書ですが、押さえるべき注意点もあります。
作成前によくチェックしてください。
①強制力のない事項もある
婚前契約で合意した内容には、必ずしも強制力が伴うわけではありません。
例えば、公序良俗に反する内容は無効とされるほか、家族行事への参加や不倫の禁止など、心を縛る内容に関しても強制は困難です。
また、離婚に関する合意も、その時点での離婚意思が必要であり、必ずしも強制力があるわけではありません。
しかし、合意内容があることで、双方が守ろうという動機付けにはなります。
②契約内容変更には相手の同意が要る
婚前契約書の内容は、相手方の合意なしに変更することはできません。
そのため、契約をする際には、双方が内容について十分に理解し、合意する必要があります。
契約後に変更を希望する場合には、再度の相談と合意が必要です。
これにより、両者の意見が一致しない場合、契約内容の変更は困難となる可能性があります。
③実現不可能な項目もあり得る
婚前契約書には、実現が難しい事項も含まれることがあります。
特に、離婚時の親権者に関する合意は、子どもの利益を最優先に考え、家庭裁判所が決定します。
したがって、婚前契約で親権者を定めても、必ずしもその通りになるとは限りません。
まとめ~婚前契約書は前向きなもの~
「何かあったら……」「離婚したら……」と内容がネガティブになりがちですが、婚前契約書はトラブルになった時の対処法ではなく、そうならないために作成するもの。
「家事の負担は……」
「浮気した時は……」
と定めることで嫌でもそこに関心が向き注意せざるを得ません。
これを実際に結婚する前に2人で決めていくのですから、結婚が「特別」なものであると意識させ、迂闊な行動を取れなくする効果があります。