統計からみてみる恋人がいない人
これを多いとみるか少ないとみるか
恋人がいるかいないかの調査は調査の団体や方法によって差があります。昨年公開された政府の「少子化対策白書」によると以下のような結果になりました。
【2015年版の「少子化社会対策白書」の概要】
政府が無作為抽出した7000人にアンケートを郵送します。返ってきたのが2700人。有効回答率が38%になります。
概算ですが
- 未婚の男女のうち「恋人がいる人」「いない人」それぞれ半々
- 恋人がいない人のうち、「相手が欲しい」と思っている人は6割、一方でいらないと思っている人が4割
- 恋人がいない人の中で半数以上が出会いの場がないと回答
この調査では半分の人が恋人がいますが、別の政府統計(厚生労働白書)によると恋人がいない人の割合は約25%になっています。全然違いますよね。そもそも「少子化白書」の回答率が約4割ですので、どこまで信頼できる数字なのかということがあります。
おそらく恋人がいる人は嬉々として回答するでしょうが、全くモテなくて惨めな思いをしている人は回答自体を拒否するのではないでしょうか?
民間機関が行っている調査でもばらつきがありますが、独身男女の半分以上が彼氏彼女がいない人だということはおおよそ共通するようです。また、恋愛サイトのアンケートに回答する人=恋愛に興味がある、恋愛スキルがある人ですので、実際の数字よりも恋人がいる割合が高く出る可能性があります。
総論で言うと、男女とも「草食化」が進んでいて、結婚しなくてもいいという価値観の人が増加しているようですが実際のところどうなのでしょう。人間の本能として異性を求めるということがそんなにすぐに低下するとも思えませんが・・・。
というわけで、さらに「恋人がいない人の割合」をもう少し掘り下げてみます。
複数の視点で恋人がいない割合を検討していく
「処女」「童貞」の割合
Man with a dinghy in the shallows / Australian National Maritime Museum on The Commons
「第14回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、未婚者の内セックスの経験がない男女は以下の割合であるというものがあります。
- 20歳から24歳:女性40.1%、男性40.5%
- 25歳から29歳:女性29.3%、男性25.1%
- 30歳から34歳:女性23.8%、男性26.1%
結婚すれば当然セックスしますので童貞処女ではなくなります。結婚できなくて残っている人の内どのくらいがセックスしないまま来てしまうのかがここで見て取れます。
もちろん、恋人と付き合う=セックスではありませんが、プラトニックな付き合いを続けられる人はそこまでいないでしょうから相関関係があります。
男女とも、30歳、40歳になっても「独身で処女・童貞」の人は約25%で推移しているというのは統計的には説得力があります。
40歳の婚活パーティに行くとそのうち25%の人が処女、童貞=付き合ったことがないという感じでしょうか。ただ、パーティに行く=恋愛にアクティブな人なので、もう少し数字は低いかもしれません。
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男女の違いと恋人の有無
統計では恋人がいない人については男女に有意な差はないようです。一方で「一度も付き合ったことがない」割合で考えると、男性のほうが多いようです。
生涯未婚率が「男性20%、女性10%」からもわかるように男性のほうが相手を見つけることが難しくなっています。このことは男性が著しく性に対して興味がなくなっていることではありません。
特定の男性が色々な女性と付き合うことを繰り返すために、一部の男性が全く女性に縁がない生き方を強いられてしまいます。上の「処女・童貞率」も未婚者の内の割合であり、女性のほうが少なくとも結婚できていますから、付き合ったことがない絶対数は男性のほうが多くなります。
特定の恋愛スキルがある男性が女性を食い散らかしているとも言えます。言い方は良くないかもしれませんが、女性のほうが方法を問わなければ付き合うためのハードルは男性よりも低いのです(それが幸せかどうかは別の話です)。
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年収と恋人がいない人の関係
Women in Business Northern Ireland Summer BBQ and Quiz 2012 / nbcharteredmarketing
もう1つ資料を見ていきましょう。内閣府実施の「結婚・家族形成に関する意識調査」によると男女ともに以下のことが分かっています。
年収が高い人
- 独身率が低い
- 恋人がいる割合が高い
- 恋愛をしたい(恋人がほしい)人の割合が高い
年収が低い人
- 独身率が高い
- 恋人がいる人の割合が低い
- 恋愛をしたい(恋人がほしい)人の割合が低い
恋愛や異性の対するアクティブさが年収に比例する結果になっています。事実として年収が高い人のほうが恋人がいて結婚できているということになります。
ただし、そのことから以下のようなことを断定することはできないと思います。
- お金を稼ぐ能力がある人は恋人を作る能力に長けている
- 異性に対して積極的ではない奥手な人だから年収が低い
生物として恋人が欲しくて伴侶を得たいという気持ちは不変のものがあると思います。そうした意識、能力がないから仕事もダメだということではありません。
結局のところ、以下のような事実があるのだと思います。
- 年収が低いことで自分に自信がない(アピールすることができない)
- お金がないので生活で精いっぱい。「婚活」に回す余力がない。
- 家庭を持つだけの年収がないと悟ってしまっているので初めから恋人を作るような行動ができない
年収800万円で彼女がいる男性が、何らかの事情で会社が倒産し、年収300万円になってしまったら、今と同じような感じで彼女を作ることができないかも知れませんし、婚活をやっても年収のステータスで切られる可能性もあります。
残念ながら今の日本では、稼ぎと恋人が比例しているようです。「草食化」というよりもそこまで余裕がなくなっている人たちがいて、恋愛市場、結婚市場が二極化しています。
別に奥手な人が増えているわけではないです
新しい出会いの手段も増えています
コラムで何度も書いていますが、「最近の若いもんは何事にも積極的ではない」ということではありません。昔だって、恋愛に奥手な人はたくさんいました。むしろ異性と出会えるチャンネルが限られていたので、何人もの異性と交際するという人はほんの一握りだったと思います。
そうではない奥手の人は、はっきり言うとお見合いで結婚できていました。本人が乗り気ではなくても周囲が半ば強引にくっつけていたと思います。だから、奥手な人が増えているから結婚しなくて少子化になっているわけではなく、奥手な人を救済する手段がなくなってきているのです。
年収が低い人の収入を上げて、恋愛へのモチベーションアップさせることも大切ですが、それだけで奥手な人がなくなるわけではありません。奥手なのも「個性」です。それを悪く言うような風潮はさらに彼らを追い詰めてしまいます。
奥手な個性を評価できるよう、結婚相談所や婚活サイトを合わせて活用して、そうした人を好きになってくれるニーズを喚起することが大切だと考えます。