最近禁止規定の意味と違憲判断
この規定が改正されることになります!
【民法第733条(再婚禁止期間)】
『女は、全婚の解消又は取消しの日方六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。』
女性だけに設けられた規定です。これによって女性は離婚しても半年間は法的には結婚できないことになっています(新しい人と事実婚や同棲することは問題ないです。法的に婚姻届が受理できないのです)。
<なぜこの規定が設けられた?>
実は民法ができたのは100年以上前の明治時代です。当時の法律はカタカナ書きでしたが、戦後ひらがなに書き直されました(当時は「女ハ、前婚ノ解消又ハ・・・」みたいな書き方です)、戦後男女同権になりいわゆる「家父長制」的な男性優位の規定は削除、改正されたのですがこの規定は残りました。
なぜなら、離婚後すぐに再婚し、しばらくして妊娠が発覚した場合、前の夫との子供なのか今の夫との子供なのかわからなくて混乱するからなのです(特に「誰の子」かで相続や扶養義務などが変わってきます)。
離婚するくらい冷え切った関係ならばセックスもないのでは?とも思いますが、暴力的にセックスを強いる夫もいるわけで法的に守らないと・・・、というわけです。
しかし、現在ではDNA鑑定をすれば99.9999…%の確率でどちらの男性との子供かはわかるため必要ないのでは?との意見がありまして改正運動も起きていました。
感情的なもつれ、子供の権利関係をどう守るのかなど、複雑に絡み合った問題です。なお、明治のころは「夫がいながら他の男と仲良くなるなどけしからん!」的な価値観もありましたが、今はそうした背景はこの条文には全く反映されていません(恋愛は自由です)。
<2015年12月16日 最高裁違憲判断>
最高裁判所には3権分立の制度上「違憲立法審査権」を持っています。憲法の規定に反する法律は違憲判断を下して、国会に改正を迫ることができます。
そんな中で、この民法の条文が違憲ではないか?という裁判が起きて、12月16日に最高裁が違憲判断を下しました。最高法規である憲法に反するこの民法の規定は変えないといけないわけです。理由はもちろん男女平等に反するからです。DNA検査などで誰の子か分かるわけなので、女性の再婚する権利を縛る理由がなくなっています。
この違憲判断は、再婚禁止規定全て×というよりも、とりあえず「100日を超える禁止期間は違憲」だとする結果になりました。条文としては間違っていることになったので、これによっていずれにせよ国会で民法の条文を改正することになります。
・再婚禁止期間を完全に削除する
・100日に短縮する(あるいはもっと短くする(50日とか))
いずれになるかは国会(立法)の議論になります。ただし、「100日以上は絶対ダメ」という結論が出たので、通達として離婚後100日後~半年までの女性の婚姻届は受理するように指導があったとのこと(暫定的な措置です)。
というわけでこの記事の内容が終わってしまったようにも思えますが、現時点では100日後からは大丈夫そうということで、離婚した翌日に再婚というのはまだ難しいようです。でも、以前から例外規定はありますのでそれを以下で解説していきます。
再婚禁止期間の例外
離婚前に妊娠していた場合
Pregnant Woman Awaiting for the Sunset / Cristi Sebastian Photography
【民法第733条第2項】
『女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。』
前の夫との子供を妊娠していることが明らかにわかっている場合(妊娠7か月など)は、すぐに再婚できます。生まれる子供は前の夫との子供になり、法的関係(相続など)もその関係に基づいて行われます。ただ、生まれてくるお子さんはフクザツですよね。
(以下は民法の条文にはありませんが、判例等で例外として認められています)
前の夫と再婚する場合
Couple / dragunsk
前の夫とよりを戻して再婚する場合は、どの段階で妊娠していたとしてもその人との子供だと推定されますので、すぐに再婚できます。でも、こうならないように離婚の判断は慎重にしたいもの。戸籍に離婚歴がついてしまうのは同じですので。
夫の生死が3年以上不明との理由で離婚判決があった後に再婚する場合
A couple, a dog an two bicycles / pedrosimoes7
夫が行方不明になっていて生きているのか死んでいるのかもわからない。夫の同意がないと離婚もできないのですが、裁判によって離婚したと決定できる場合があります。その場合、前の夫の子供を妊娠している可能性はありませんから、すぐに再婚できます。
夫の失踪宣告により婚姻が解消した後に再婚する場合
Alone in Paris / Alexander Burghardt
夫に限らず行方不明になった人は「失踪宣告」を受けることができ、法的な関係を解消することができます(探し続けるというのもありです)。この場合も、前の夫との子供を妊娠することはないので、すぐに再婚できます。
女性が受胎能力のない年齢に達している場合
Tourist Couple / pedrosimoes7
難しい表現ですが要は「シルバー婚」の場合はすぐに再婚できるということです。60歳、70歳の女性が妊娠することはありませんから、すぐに新しい男性と再婚できます。
優生保護法に基づく優生手術をした旨の医師の証明書を添えて再婚の届出がなされた場合
Dancing woman / jwerkman
かつて日本では一部の遺伝病や重篤な病気の人に強制的に妊娠できないように(男性の場合はさせられないように)手術を行える規定がありました。
「悪い」遺伝子を残さないように・・・、ということでしたが、人権無視のとんでもない規定で、この法律は「母体保護法」に変わっています。女性の中には体が弱く妊娠すると危険な人もいて、望まない妊娠を防ぐために本人が同意して不妊手術(妊娠しない手術)をすることは認められています。
「妊娠できない体」である医師の証明があれば、子供ができないわけですのですぐに再婚できます。
以上の理由ですが、いずれも女性を差別するというよりも、妊娠した子供の権利や地位を守るということが再婚禁止期間の背景にあるので、その可能性がない場合は例外としてすぐに再婚できるようになっています。
新時代の夫婦関係を目指して
法律婚と事実婚をどう考えるのかが今後の課題
最初にも述べましたが、この規定に関係なく、新しい夫と同棲し子供を産むことは問題ありません。しかし、「夫」との子供でないため、各種権利(相続など)が制限されてしまうことが問題でした。
また法的な「妻」でなければ、扶養控除などを受けることもできません(ただの彼女なので)。法的に「結婚」していると得な部分が多いのですね。
ただし、欧米などでは「事実婚」であっても夫婦と同じ権利や特典を与える国もあります。ここは議論が分かれるところです。法的に「結婚」したい女性もいれば、「結婚」したくないけどパートナーと暮らしたい女性もいます。その辺りをどう折り合いをつけていくのか、今後の社会的な課題になるのだと思います。
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